ほぼ健康な森 この木々には野鳥が多く生息しており、地面にはササがびっしりと生え、人を寄せ付けまいとしているかのようだ。また、その下の地面には腐葉土が形成され、そこに昆虫等も多数生息し、多層にわたる生態系を構成している。これが本来の姿だが…写真をクリック!



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 ◆自然保護に関するひとりごと
 ◆まず安全第一を心掛けよう
 ◆自然保護を心掛けよう
 ◆社会的行動を心掛けよう
 ◆意味のある採集と保管を心掛けよう


いったん人が入ると、森は姿を変えはじめる。木々は何か元気をなくしたような気配。また上の写真に比べ下草が短くなっている。

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◆人は自然と共存してきたのに
人間、いや生物は、他の命(たとえば肉や野菜)を食べて生きていく。家や服さえも、木を切らないと作れない。昔…18世紀ごろまでは、それで共存できていた。しかし人口も増え文明が発展し、破壊が大規模になると同時に、人間は人工的な化学物質を自然界にバラ巻くようになった。この破壊に対する影響に、今みんなが困りはじめている。自然は破壊された部分を思ったほど直してくれなかったのだ。

◆局所的な批判では何も変わらない
しかし、よくあるように、自然破壊を直接やる人(たとえば大規模な自然破壊を伴う愛知万博)を、一方的かつヒステリックに批判しても何も変わらないのではないか。なぜなら今使っているこのパソコン(材料は半導体/ガラス/樹脂)や電気(原料は火力の石油/水力のダム/原子力のウラン)でさえ、どこかの山や海底を削って採集された鉱物から出来ているからだ。もうすでに破壊含みですべての物事が進んでいるのが「我々の今」なのだ。

◆しかし批判もしたくなる
もちろん、意識を高めることはいい事。趣味で宝石やキレイな原石を買い集める人も、一度、露天掘りの鉱山などに行けば、考えが変わるはずだ。現場では、木という木が倒され、草という草が引き抜かれ、あとに無残な荒れ地をさらけ出している。その結果が、あなたのそのキレイな石だとわかったらどうか。

◆今の文明は「自然破壊型」だ
もちろん、最もいけないのは、今の文明の「やり方」だ。 有害化学物質の生産と利用、陸海空への廃棄など…これらの破壊的手法がいけないのだ。この方法で文明を続けている限り、これからも、直接的/間接的に自然は壊れていくだろう。

◆「自然共存型」文明を再構築しよう!
このように便利なようで、損も得もしないのが今までの文明だとするなら、自然のケアを考えるのがこれからの文明だ。そこに意識を向け、自然と共存できる文明を再構築できる日がいつか来るはず。そのためには、大きな意識改革が必要だ。

その意味で、鉱物採集も悪いことではない。何かと間接的にしか触れえない昨今、山で厳しく優しい自然と直接向き合えるイイ機会なのだ。ちゃんと考えることが出来れば、ある山のある石が絶産となった事実でさえ、また、無残に掘込まれた木の根元の風景でさえ、チャンスとなる。また、石が欲しくて地面を掘り進めばミミズはおろか、真っ白なカブト虫やセミの幼虫に出会う。その時どう考えるか、だ。

最初から話がそれたが、当ホームページの採集の心得は「自然との共存」という観点から書き記したいと思う。


露天堀の鉱山 ここには最近、日曜ごとにバスで乗り付けるツアー業者が居るが、そのため日々の荒廃が激しい。鉱山稼働中当時は、ズリ崩落防止の石垣があり、その石自体が、全部スイカ大の水晶のついた石だったと言う。今はそれらも全て持ち去られてしまった

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◆怪我に注意
ズリやガケなどでは落石に注意するとともに、自分がどかした石が、斜面を下へと落ちていき、他の人を傷つけないよう注意。また、叩いた石の破片が自分や他人に飛ばないよう注意。あなたが怪我をして悲しむのは、あなた自身だけではない。

◆過酷な自然への対応
毒ムシ、ヘビなど害虫害獣の多い場所、天候の急変、危険な地形への対応。それらへの予防策と、実際何かあった際の行動がポイント。十分な心がけと危機管理を。

◆万全な準備
道具は、ガイドブックなどを見て、安全なものをきちんとそろえる。自分の道具は使う前に点検修理すること。チェックシートで忘れ物のないように。道具を扱う技術をちゃんと習うことがケガを防ぐポイント。現場の情報はきちんと把握してから出発。知っている人と一緒に行くのが最もよい。また、遭難した時の対応策として、親しい人に「何処へ行きいつごろ帰る」と伝えておく。体調が悪い時や猛夏、真冬は行かないこと。

 


 ますます、いけないパターン。確かに昨年までは、これらの木は生きていた。樹齢にして何十年もの木が稼働休止後の破壊によってナギ倒されている。写真中央を見ると丸太をノコギリでカットしたあとがある。なぜ? 中にはダイヤモンドカッターを直接鉱脈に当てる人も居るから、ついでに切ったのか?

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◆同じものを大量に採集しない
鉱物は植物と違って増えない。採り尽くしたらそれっきりだ。現場に行くと、夢中でどんどん採集してしまう人がいる。しかしひと通り採ったら、ちょっと並べてみて、いいものだけを選択し、あとは、あとから来る人達のため、その鉱山に残してあげよう。絶産となるまで一人でも多くの人が楽しむべきだ。 中には、たまたま大量に採れたものを売っている人もいる。一種の有効活用だとは思うが、売りさばくのを目的に大量に仕入れるのは、本末転倒かも知れない。そういう形の大規模な採集が行われたことで採集禁止になる地区は多い。

◆採集は自然へのダメージを少なく
山に行くと、大木の根の周辺を猛然と堀り返してあるのを見かける。非常に危険であり自然保護からも不適当な行動だ。しかも破壊されるのは目立つ大きさのモノだけではない。小さな虫だってそこに居たはずだ。そんな中でオススメ採集法は、ズリ(鉱山の捨石)。自然破壊された結果の二次的採集であるから、いく分ダメージが少ない。また、掘り返したら元に戻すのが良いだろう。

◆採集地の紹介時は気を付けよう
人に採集を紹介するときは必ず、「採集にあたっての心がけ」を伝えていかなければいけないと思う。しかし、こういうことは同僚や知人には言いにくい。「採集の心得」は採集ガイドや図鑑の後のほうのページに載っていたりする。口で伝えるよりそれを読んでもらうといいかも知れない。そして十分に話し合おう。

◆破壊以上に自然保護しよう
どんな採集も自然破壊の一部だ。だから、ひとりひとりが採集による自然破壊を少なくするとともに、より大規模な自然破壊を防止する社会作りを支援しよう。自然保護に対する呼びかけを行うことで、自分がする破壊以上に自然を保護したい。

 


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◆立ち入り許可を得よう
本来、地球は誰のものでもない。しかし社会的には、どこかの山は誰かの土地であり、許可なく入ると不法侵入になり、懲役や罰金の刑が待っている。山に入る場合は、必ず立ち入り許可を得よう。鉱山の看板に地主名と住所が書かれていたりするし、わからない時は、その土地を管轄している役所に聞けばわかる。

◆入山料を支払おう
山に入るのに料金を取られる場所がある。これも採りすぎないための工夫の一つだ。中にはこの入山料を払いたくないばかりに、関所を遠回りして行く人がいる。

◆採集禁止場所に注意しよう
国定公園や禁止指定場所など、そのようなところでは採集せず、ビデオやカメラに納めるのがいいだろう。こういう時代だから、映像も非常に価値があると同時に、自然破壊の批判も受けない。これからのバーチャル時代には最適な採集法といえる。

 


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◆価値が減りつつある鉱物自慢
ぼくらは、鉱物の美しさをより多くの人に知って欲しいと思う。また、鉱物を通して自然の素晴しさを知って欲しいと思う。しかしいっさい興味のない人に「さあどうだ!」とばかりにズラリと立派な標本を見せても「自然破壊」と思われるのがオチという今日このごろ。いくら立派な標本を持っていても、決してその人の評価が上がったりはしない。むしろそこまで「モノ」に頼っている人の、精神性に疑いを感じるのは、私だけだろうか?

◆鉱物を通した経験を何かに昇華してこそ健康
どうせ採るなら、単なるコレクションにとどまらず、何かの発展的目的を持って収集したい。集めるだけでなく、良く観察し、研究し、何か少しハイレベルなものに昇華させたいところだ。もちろん見ているだけでも、実に心なごむのが鉱物なのだが…。

1998年6月8日初版 1999年5月29日1次改訂 (c)A-T



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